日本郵船は９月30日，「有人自律運航船」実現に向けた自動運航技術の実証実験に成功したと発表した。これはIMOが定めた国際ルール「自動運航船の実証試験を行うための暫定指針」の各種項目をクリアした世界初の実証実験であった。実験は最適航行プログラムを搭載した70,826総トンの大型自動車専用船イーリス・リーダーIris Leaderで，中国の新沙から名古屋（９月14～17日），名古屋から横浜（９月19～20日）の区間（湾内を除く）で行なわれ，このプログラムが航海計器からのデータをもとに周囲の状況を把握，衝突リスクを計算して最適避航針路を決定し自動で操船するまでの一連の動作を実海域で行なった。通常の当直体制を維持しつつ，昼夜を問わず断続的に最適航行プログラムを用いて航行した様子を監視し，評価した。この結果，陸上シミュレーターでは得られない各種データを取得でき，同プログラムによる高い安全性，高効率性の運航，実用化の可能性を確認し，有人自律運航船の実現に向け大きな一歩となった。今後はプログラムによる最適針路と人間の判断との差異の調整など，より高度な支援技術へと改良を重ねていく。