●二元燃料貨物船 相次いで発注

 2050年のゼロ・エミッション化に向けたサステナビリティ(環境・社会・経済の持続可能性)経営推進のため,海運大手ではLNGなどを燃料に導入した次世代型環境対応船の建造に拍車がかかっている。

 6月にLNG自動車船を12隻発注した日本郵船に続いて商船三井は8月3日,新来島どっくおよび日本シップヤードと7,000台積みLNG燃料自動車船4隻の建造で合意したと発表した。2024年より順次竣工する予定。同社の「クリーン代替燃料の導入」戦略の一環で, 2030年までにLNG燃料船を約90隻投入する計画。

 これに先立つ7月20日,日本郵船,商船三井,川崎汽船の3社はそれぞれ,JFEスチールとLNG燃料ケープサイズ撒積船各1隻による長期輸送契約を締結し,日本シップヤード(NSY)と建造に基本合意したと発表した。2024年初頭から2025年初頭にかけて竣工し,JFEスチール向けに海外から鉄鉱石および石炭を輸送する予定。主要目は約110,800総トン,約210,000重量トン,全長299.99メートル,最大幅約50メートルで,二元燃料低速機関X-DF 2.0を採用し,IMOのNOx3次規制に対応。このうち川崎汽船では風力を利用した自動カイトシステム“Seawing”の搭載を計画しており,LNGで25~30パーセントとされるCO2排出削減の上乗せを図る。邦船社および国内鉄鋼メーカーのLNG燃料ケープサイズ撒積船はこれが初建造。

 他方,商船三井のグループ会社であるシンガポールのフェニックス・タンカーは8月5日,名村造船所とLPGと重油の二元燃料に対応するLPG・アンモニア運搬船VLGC(Very Large Gas Carrier)2隻(1隻はオプション)の建造契約を締結したと発表した。全長230.0メートル,最大幅36.6メートル,満載吃水12.0メートルの87,000立方メートル型で,主機には三井-MAN 6G60ME-C10.5-LGIP型エンジンを搭載する。本船は名村造船所が三菱造船と技術提携して名村の伊万里事業所で建造され,2023年以降順次竣工の予定。本船は将来的にLPGと特性が類似しているアンモニア燃料への改修も視野に入れている。(商船三井/川崎汽船/名村造船所)