●シップ・オブ・ザ・イヤー2020 発表
2020年に日本で建造された話題の船舶の中から,技術的・芸術的・社会的に優れた船を選考し与えられる「シップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)2020」は,5月11日にウェブ会議形式で選考委員会が開催され,予備審査を通過した10隻のうち,大賞のほか部門賞(小型客船,小型貨物線,漁船・調査船,作業船・特殊船)各1隻を選定した。授賞式は7月9日に行なわれる。
◇シップ・オブ・ザ・イヤー2020
LNG燃料自動車運搬船「Sakura Leader」(サクラ・リーダー) 新来島豊橋造船で10月28日に竣工した国内初建造の大型LNG燃料船。日本郵船の所有運航でトヨタ車などの完成車輸送に従事している。LNG燃料化により輸送単位あたりのCO2排出量を2008年建造船比40パーセント以上削減したほか,日本海事協会より,先進的デジタル技術導入船に付与される船級符号「デジタル・スマート・シップ」(DSS)を世界で初めて取得し,環境とデジタル化の取組みが評価された。72,285総トン,垂線間長196.0メートル,幅38.0メートル,ディーゼル1基,速力18.0ノット,乗用車換算7,000台以上積載。1,500立方メートルのLNG燃料タンク2基装備。
◇小型客船部門賞
高速双胴クルーズ船「SEA SPICA」(シー・スピカ) 瀬戸内クラフトで8月4日に竣工した瀬戸内しまたびコーポレーションの双胴型観光クルーザー。瀬戸内海エリアの観光振興のため,瀬戸内海汽船グループ,JR西日本グループ,国土交通省中国運輸局の3者連携により,鉄道・運輸機構の国内クルーズ船建造制度の第1号船として誕生した。ソファのような座席デザイン,開放的なデッキ,4面マルチディスプレイなどを備えるのが特徴。行政・事業者一体となった次世代型取組みの象徴的な存在である。90総トン,垂線間長25.7メートル,幅6.8メートル,主機ディーゼル2基,船客定員90名。
◇小型貨物船部門賞
LNGバンカリング船「かぐや」Kaguya 川崎重工坂出工場で9月30日竣工。内航LNG船建造技術を踏襲し,バンカリング船としての機能性を考慮して開発された国内初のLNGバンカリング船。セントラルLNGマリンフューエルの運航で,上掲のサクラ・リーダーなど大型外航船に「Ship to ship方式」によりLNG燃料を供給する。船舶のLNG燃料化の促進およびわが国港湾の競争力強化への貢献が期待される。4,044総トン,垂線間長76.2メートル,幅18.0メートル,主機ディーゼル・エレクトリック,速力10.0ノット,LNG積載量3,193.7立方メートル。
◇漁船・調査船部門賞
遠洋鮪延縄漁船「第一招福丸」Shofuku Maru No.1 気仙沼のみらい造船で2月5日に竣工した同地の老舗漁業会社臼福本店の次世代型遠洋鮪延縄漁船。「人が集まる魅力ある漁船」をコンセプトに,長い洋上生活の快適性向上のため,エアアロマの設置や内外装デザインの一新,温もりのある居住空間,陸上並みの高速インターネット環境の整備など,可能な限り陸上に近づけるように工夫したのが特徴。遠洋鮪延縄漁船としては初となる大型バルバス・バウ,バトックフロー船型を採用し,推進抵抗を低減している。486総トン,垂線間長50.5メートル,幅9.2メートル,主機ディーゼル1基,速力12.3ノット,乗員最大25名。
◇作業船・特殊船部門賞
川崎市の消防艇「かわさき」Kawasaki ツネイシクラフト&ファシリティーズで3月23日竣工。放水射程距離120メートル,伸縮放水砲の高さ21メートルを誇る最新鋭の化学消防艇で,放水砲を6基装備し,消防ポンプ2基で最大毎分50,000リットルを放水可能。柔軟な発想で開発された特殊な船底形状により,優れた航行性能に加え,同クラスでは類を見ない広い緊急救助デッキ(後部)とウォータージェット推進の両立を可能にした。安定した船位保持にため自動位置保持装置も装備。109総トン,垂線間長31.8メートル,幅8.0メートル,主機ディーゼル2基,航海速力16.3ノット,乗員最大40名(1.5時間未満)。
(日本船舶海洋工学会)