■新型FFMの豪州移転事業は日本が勝利
8月5日,日本政府とオーストラリア政府は,豪海軍が計画中の次期汎用フリゲイト(次期FF)に,わが国の4,800トン型護衛艦(新型FFM)ベース案が選定されたと発表した。わが国からの完成品の装備品移転は,フィリピンへの警戒管制レーダーに引き続き2例目となる。新型FFMは,ライバルの独MEKO A200型ベース案とともに,豪次期FFの最終候補として残され,これまでわが国はその受注競争に取り組んできた。豪政府は今回の発表に先立つ8月4日の内閣国家安全保障委員会(NSC)で日本案の採用を決定し,同日深夜にマールズ副首相兼国防相から中谷防衛大臣に電話会談のかたちで意向が伝えられていた。
豪政府は急速に退役化が進むアンザックAnzac級フリゲイトの代替として,最大100億豪ドル(約9,500億円)規模で, 11隻の次期FFの整備を計画しており,今後は最終的な価格等について,三菱重工と年内の契約締結を目指して交渉が進められる。計画が順調に進めば,豪次期FFは最初の3隻が日本国内で,残りが豪西部パースのヘンダーソン造船所でそれぞれ建造され,豪海軍への1番艦の引渡しは令和11年(2029年)が予定される。
今回の受注競争の勝因として,①新型FFMの先進性が豪側に認められたこと,②日本側から豪側に中国という共通の脅威を前に,両国が準同盟国として,共通の装備と補修拠点を持つことの重要性について十分なPRが行なえたこと,③武器輸出について経験の浅い日本が官民総力体制で受注競争に臨んだこと,④日本政府から建造に際しては海自向けよりも豪海軍向けを優先する意向が示されたこと,⑤主契約社となる三菱重工が過去の教訓を踏まえた積極的なセールスを展開したこと等が挙げられる。