■令和5年度防衛予算の概算要求決定

 8月31日,防衛省は令和5年度(2023年度)の業務計画案と概算要求を決定し,財務省に提出した。

 防衛関係費の総額は5兆5,947億円+事項要求(金額を定めず項目のみ要求すること)で,現時点では前年度比1.1パーセントの増額である。

 同年度概算要求は,前年度以前と異なって,わが国の直面する厳しい安全保障環境に向き合い防衛力の抜本的な強化を行なうため,多数の事項要求が含まれている。これらの事項要求を含めた最終的な政府予算案は年末頃に明らかになる予定で,概算要求の金額よりも大幅な増加が見込まれる。

 海上自衛隊の要求額は1兆3,527億円(デジタル庁一括計上経費を含むと1兆3,580億円)+事項要求で,現時点では前年度比5.1パーセントの増額であった。

 新たに要求された海上自衛隊の艦艇は以下の7隻(14,500トン)だが,いずれも金額は示されていない。

 ▷3,900トン型護衛艦(FFM) 2隻

 ▷3,000トン型潜水艦(SS) 1隻

 ▷1,900トン型哨戒艦 4隻

 3,900トン型護衛艦は“もがみ”型の11,12番艦で,3,000トン型潜水艦は“たいげい”型の7番艦である。哨戒艦は新型で,その詳細は「世界の艦船2022年11月号(本文154~157頁)」の解説記事を参照されたい。ほかに廃案となったイージス・アショアの代替策として,イージス・システム搭載艦の整備に必要な構成品等(設計費やエンジン等)を要求した(別項参照)。

 就役中の自衛艦の艦齢延伸対策として,“むらさめ”型護衛艦の工事(1隻),部品取得(3隻),“こんごう”型護衛艦の工事(1隻),部品取得(1隻),“おおすみ”型輸送艦の工事(1隻),練習艦“かしま”の部品取得,潜水艦の工事(おやしお型5隻,そうりゅう型1隻),部品取得(5隻)が要求されている。

 このほか,“いずも”型護衛艦の改修に36億円が要求された。その内容は,“いずも”が航空機格納庫用の静止形電力変換器で,“かが”が着艦誘導装置(JPALS)の取得,飛行甲板にある標識灯火等の改修,温度計測装置の工事である。

 さらに“むらさめ”型等の対潜システム改修(むらさめ型/たかなみ型に対するバイ/マルチスタティック能力の付与を含めた対潜能力のアップグレード),潜水艦戦闘システムの近代化改修(既存の潜水艦の情報処理サブシステムや曳航アレイの更新)も要求された。

 陸上自衛隊の予算では小型級船舶2隻(LCU)が要求されている。

 海上自衛隊の航空機の新規要求は以下のとおり。

 ▷P-1哨戒機 事項要求

 ▷SH-60L哨戒ヘリコプター 6機

 ほかにP-3C哨戒機1機の機齢延伸,EP-3電子戦データ収集機2機の機齢延伸,UP-3D電子戦訓練支援機2機の能力向上を要求している。

 航空自衛隊の予算では,F-35A戦闘機6機(別途追加分を事項要求),F-35B戦闘機6機(同),F-15戦闘機の能力向上20機,F-2戦闘機の能力向上4機を要求した。

 そのほかに,自衛隊のスタンド・オフ防衛能力を高めるため,12式地対艦誘導弾能力向上型の(地発型,艦発型,空発型)について開発を継続し,地発型は装軌部隊配備のため量産を開始する。島嶼防衛用高速滑空弾の研究,量産(早期配備型)を進める。極超音速誘導弾の研究開発の推進。島嶼防衛用新対艦誘導弾の研究を進める。JSM(F-35A用)およびJASSM(F-15能力向上機用)の取得が要求された。また,新型対空ミサイルのSM-6の取得も要求されている。