●海上保安庁が令和7年度概算要求を公表

 8月27日,海上保安庁は令和7年度概算要求を公表した。

 令和7年度予算の基本的な考え方は以下のとおり。

 近年,尖閣諸島周辺海域における中国海警局に所属する船舶への対応や,大和堆周辺海域における違法操業への対応,北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射,外国海洋調査船によるわが国の同意を得ない調査活動,激甚化する自然災害等,依然として予断を許さない状況にあり,これに加えて,ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢など,現下の国際情勢は一層厳しさを増している。

 こうした様々な任務に的確に対応するため,「海上保安能力強化に関する方針」(令和4年12月関係閣僚会議)に基づき,巡視船・航空機等の大幅な増強整備などハード面の取組みに加え,新技術の積極的な活用や,防衛省・自衛隊,警察,外国海上保安機関等の国内外の関係機関との連携・協力の強化,人材育成などソフト面の取組みも推進することにより,海上保安業務の遂行に必要な6つの能力(海上保安能力)を一層強化する。

 また,治安・防災業務の充実,海上交通の安全確保,防災・減災,国土強靭化の推進のほか,本年1月に羽田空港において発生した航空機衝突事故等を受けた航空機安全対策の強化に取り組み,国民の安全・安心を確保するための業務基盤の充実を図る。

 令和7年度概算要求の総額は2,935億円(前年度比1.12倍)。主な新規分の要求は以下のとおり。

①海上保安能力の強化

 ◆新たな脅威に備えた高次的な尖閣領海警備能力

 ▷大型巡視船1隻(3,500トン型,10年度就役)の新造に14.8億円。

 ◆新技術等を活用した隙のない広域海洋監視能力

 ▷中型ジェット機1機(機種選定中,10年度就役)の調達に0億円。

 ◆大規模・重大事案同時発生に対応できる強靱な事案対処能力

 ▷多目的巡視船(30,000トン,11年度就役)に34.3億円。

 ◆戦略的な国内外の関係機関との連携・支援能力

 ▷国際機関と連携した能力向上支援(国連薬物犯罪事務所への職員派遣)に0.4億円。

 ◆海洋権益確保に資する優位性を持った海洋調査能力

 ▷新型測量船1隻(高機能代替,10年度就役)に5億円。

 ◆強固な業務基盤能力

 ▷小型巡視船1隻(180トン型,9年度就役)に3.9億円。

 ▷大型巡視艇1隻(30メートル型,8年度就役)に8.7億円。

 ▷小型巡視艇2隻(20メートル型,7年度就役)に15.7億円。

 ▷人的基盤の強化・業務効率化に6億円(継続含む)。

②国民の安全・安心を守る業務基盤の充実

 ◆海上交通の安全確保:38.8億円

 ◆防災・減災,国土強靭化の推進:28.7億円

 ◆羽田空港航空機衝突事故等を受けた安全対策

 ▷航空機安全対策の強化(管制官と海保パイロットとの意見交換実施,海外でのシミュレーターによるトラブル対応研修実施)に1.1億円。

 なお,令和7年度定員要求では,海上保安能力の強化,国民の安全・安心を守る業務基盤の充実に対応するための要員として325人を要求している。

 内訳は海上保安能力の強化に226人(尖閣警備要員:124人,新技術等を活用した広域海洋監視:46人,国内外機関との連携支援:17人,海洋権益確保のための海洋調査能力:11人,強固な業務基盤能力:28人),国民の安全・安心を守る業務基盤の充実として99人(治安・安全対策等の強化のための要員:99人)となっている。

 また,機構要求として,海洋安全保障MDA(海洋状況把握)のための海洋監視体制強化を目的に本庁警備救難部管理課への「海洋監視企画官」(仮称)の設置と,デジタル技術を活用した業務効率化のため本庁総務部情報通信課に「デジタル技術推進官」(仮称)の設置を要求している。

 令和7年度概算要求の大型巡視船がすべて承認されれば,その保有数は令和5年度末の75隻から11年度末には91隻に増加する見込みである。